この記事のポイント
- デイビス側は**4年・約2.75億ドル(約410億円)**の最大額の延長を求めている。延長が終わるのは38歳のシーズン
- The Athleticは、年齢・けが・若手育成の3つを理由に、ウィザーズが応じる可能性は「ほぼない」と報道
- この2シーズンの出場は**全164試合のうち71試合**。昨季は手のけがで20試合しか出られなかった
- デイビスとトレイ・ヤングの2人で、チームの年俸の約57%を使う。最大額の延長は若手の時代にも重くのしかかる
- 本人は「シーズンが終わってから話す」。2月のトレード期限と、来年6月の契約の選択が分かれ道になる
数字で見るデイビスの延長交渉(報道ベース)
デイビス側が求める延長の総額(4年2.75億ドル)
いまの年齢。延長が終わるのは38歳のシーズン
この2シーズンの出場数(全164試合のうち)
デイビスとトレイ・ヤングの2人で使うチームの年俸の割合
最大額を求めるデイビス、応じないウィザーズ
開幕を2週間後に控えたウィザーズで、大きな契約の話が表に出てきた。10月6日(現地)、The Athleticのジョシュ・ロビンズ記者とデビッド・アルドリッジ記者が、アンソニー・デイビスに最大額の延長契約を出す可能性は「ほぼない」と伝えた(NBC Sportsが要約)。デイビスと代理人のリッチ・ポールは、4年で約2.75億ドル(約410億円)という、ルール上もっとも高い延長を求めているとされる(Yahoo Sports、CBS Sports)。
デイビスは2026年2月、3チーム間のトレードでマーベリックスからウィザーズに移ってきた。2025年2月のルカ・ドンチッチとの電撃トレードでレイカーズを出てから、わずか1年で2度目の移籍だ。ところが移籍の前から左手のじん帯を痛めており、昨季はシーズン終盤の3か月以上を欠場。ウィザーズのユニフォームで公式戦に出たことは、まだ一度もない。
本人の考えははっきりしている。9月末のメディアデーで、延長について聞かれたデイビスは「シーズンが終わってから。まずはシーズンを通して高いレベルでプレーする」と答えた(Yahoo Sports)。つまり今は急がず、今季の働きを見せてから条件を話し合うという姿勢だ。
数字で見ると:33歳、2年で71試合
ウィザーズがためらう理由は、数字を見ると分かりやすい。デイビスはいま33歳で、来年3月に34歳になる。求めている4年の延長は、いまの契約の最後の年(2027-28)を置きかえて2030-31シーズンまで続く形になり、契約の最後の年には38歳になっている。
もう1つは出場試合数だ。NBAのレギュラーシーズンは1チーム82試合。デイビスはこの2シーズンで、全164試合のうち71試合にしか出ていない(NBC Sports)。昨季はマーベリックスで20試合に出て、平均20.4点・11.1リバウンド・1.7ブロックとさすがの数字を残したが、そこで手のけがをしてしまった(Yahoo Sports)。76試合に出た2023-24シーズンのような年もあるが、過去7シーズンで60試合以上に出たのは2回だけだ。
MVPやオールNBAなどのアワードは、原則65試合以上出ないと選ばれない(「NBAのアワード一覧と「65試合ルール」」)。どんなに力があっても、コートに立てなければチームの勝ちにはつながらない。最大額の延長は、1年あたり約6,900万ドル(約103億円)。これを38歳まで払い続けることを、ウィザーズは大きなリスクと見ている。
デイビスの出場試合数(レギュラーシーズン、1シーズン82試合)
なぜウィザーズは慎重なのか:年俸の6割が2人
お金の面でも、ウィザーズには余裕がない。2026-27シーズンのデイビスの年俸は約5,846万ドル(約88億円)で、チームで一番高い(「アンソニー・デイビスの年俸と契約」)。夏に4年約2.13億ドルの延長を結んだトレイ・ヤングが約4,949万ドルで続き、2人でチームの年俸の約57%を使っている(「ウィザーズの年俸一覧」)。
NBAには、チームが使える年俸の“上限の目安”がいくつも決められていて、それを超えるほど罰金(ぜいたく税)や補強の制限が重くなる。いちばん厳しい「セカンドエプロン」を超えると、トレードやドラフト指名権の使い方まで縛られる(「セカンドエプロンとは」)。ウィザーズはいまその手前にいるが、The Athleticは、この上限が近づくことも最大額を出さない理由の1つに挙げている。
そしてウィザーズは、3シーズン続けて18勝以下に終わった再建中のチームだ。今年のドラフトでは全体1位でAJ・ディバンサを指名した(「ウィザーズの“タンキング告白”と新しいロッタリー」)。ディバンサがルーキー契約を終えて大きな契約を結ぶのは、ちょうどデイビスの延長の最後のころにあたる。若手が育つ時期に、30代後半の選手の大型契約を抱えたくないというのが、チームの本音だろう。
ウィザーズの2026-27の年俸(約1.89億ドル)のうち
- アンソニー・デイビス31%
- トレイ・ヤング26%
- ほかの選手全員43%
落としどころはどこか
では、まったく話がまとまらないのかというと、そうとも限らない。CBS Sportsは8月の記事で、似た年齢・立場で延長を結んだルディ・ゴベアの契約を参考に、3年で約1.32億ドル(約200億円)あたりが現実的だと試算している。1年あたり約4,400万ドルで、デイビスの希望より年間2,500万ドル近く低い。これはあくまで記者の見立てで、実際にこうした提示があったという報道はない。
デイビスには、待つことで得をする道もある。いまの契約の最後の年(2027-28、約6,279万ドル=約94億円)は、受け取るかどうかを本人が選べる「プレーヤーオプション」で、期限は2027年6月29日だ。今季けがなく活躍すれば、オプションを使わずにFAになり、ほかの球団から好条件を引き出せる。逆にけがが続けば、オプションを使って約94億円を確実に受け取ればいい。決める権利がデイビスの側にあるから、いま安い延長に応じる理由は小さい。
同じように「延長を急がない」選手は、ナゲッツのニコラ・ヨキッチにもいる(「ヨキッチが延長にサインしない理由」)。ただしヨキッチはチームが最大額を出したい側で、デイビスはチームが出したくない側。同じ“待ち”でも、立場は正反対だ。
デイビス側とウィザーズ側の考え(報道ベース)
今後どうなるか:カギは2月のトレード期限
報道によると、代理人のリッチ・ポールは、2月のトレード期限にかけてほかの球団の関心を探るとみられている。ウィザーズが勝てずに順位が下がれば、優勝を狙うチームがデイビスを求め、ウィザーズは若い選手やドラフト指名権と引きかえに放出する、という流れも考えられる。デイビス自身も「負けているチームが急に優勝候補になるのはとても難しい」と話しており(Yahoo Sports)、勝てる環境を望んでいることはうかがえる。
一方で、デイビスが開幕から元気にプレーし、ヤングとのコンビでチームの勝ち星を大きく増やせば、話は変わる。ウィザーズのシーズンの勝ち星の予想ラインは32.5勝(CBS Sports)と低いが、もしプレーインを争うところまで行けば、チームの評価も交渉の空気も一変するだろう。
見どころは3つ。1つ目は開幕からの出場試合数。2つ目は、ウィザーズが12月〜2月にどの位置にいるか。3つ目は、トレード期限までにデイビスをめぐる動きが出るかだ。デイビスの年俸の推移は「アンソニー・デイビスの年俸と契約」、チームの情報はウィザーズのチームページにまとめている。交渉に動きがあれば、このサイトで続報を出す。
この先の流れ
- 12026年10月〜
シーズン開幕。デイビスがウィザーズで初めて公式戦に出る。出場試合数と働きが交渉の材料になる。
- 22027年2月
トレード期限。代理人のリッチ・ポールはほかの球団の関心を探っていると報じられている。
- 32027年6月29日
2027-28の年俸約6,279万ドル(約94億円)を受け取るかどうかを決める期限(プレーヤーオプション)。
- 42027年7月
オプションを使わなければ、制限のないFAとしてどの球団とも交渉できる。