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ユーロリーグがNBAヨーロッパの提案を拒否。NBAの“1球団の値段”で欧州リーグ全体が買えてしまう構図を数字で読む

ー 13クラブが反対、「植民地主義的」の声も。NBAは2027年10月の開幕を目指すが、手を組むのは2028年以降の見方 ー

NBAがヨーロッパに作ろうとしている新リーグ「NBAヨーロッパ」の計画が、壁にぶつかった。欧州最高峰のユーロリーグの株主13クラブが、NBAの提案を全会一致で拒否したのだ。背景にあるのは、あまりにも違う“お金の規模”。NBAの新球団1つの加盟料で、ユーロリーグ全体が何個も買えてしまう。この差が、なぜ交渉をこじらせたのかを数字で整理した。

この記事のポイント

  • ユーロリーグの株主**13クラブが全会一致で**NBAの提案を拒否。「植民地主義的」という声も出た
  • ユーロリーグ全体の値段の目安は約15.9億ドル(約2,400億円)。NBAのラスベガス新球団1つの加盟料(100億ドル)の**約6分の1**
  • NBAはユーロリーグに拡大を止めるよう求め、値段も相手の希望(最低30億ドルなど)に届かなかったと報じられた
  • NBAヨーロッパは16チーム(固定12+入れ替え4)で2027年10月の開幕が目標。ただし両者が組むのは2028年以降の見方
  • 交渉は終わりではなく始まり。1か月以内にNBAが新しい提案を出す可能性がある

数字で見るNBAとユーロリーグ(報道ベース)

1ドル=150円、1ユーロ=約1.13ドルで計算。金額はロイター、Yahoo Sports(Sportico)、NBC Sportsなどの報道による
13クラブ

提案に反対したユーロリーグの“株主”クラブ(全クラブが反対)

約2,400億円

ユーロリーグ全体の値段の目安(14.1億ユーロ=約15.9億ドル)

約1.5兆円

NBAのラスベガス新球団1つの加盟料の見込み(100億ドル)

16チーム

NBAヨーロッパの計画(固定12+成績で入れ替わる4)

ユーロリーグが「ノー」を突きつけた

日本時間の10月7日、ヨーロッパのバスケット界から大きなニュースが届いた。欧州最高峰のリーグ「ユーロリーグ」の株主である13クラブが、イタリア北部のコモ湖畔にある町チェルノッビオで会議を開き、NBAから届いた協力の提案を全会一致で拒否した。ロイター、Yahoo Sports(Sportico)、スペインのARAなど複数のメディアが伝えている。

NBAは国際バスケットボール連盟(FIBA)と組み、ヨーロッパに新しいリーグ「NBAヨーロッパ」を作る計画を進めている。ロンドン、パリ、マドリード、バルセロナ、ベルリン、ミラノなど大都市にチームを置き、2027年10月の開幕を目指すというものだ。今回の提案は、すでにヨーロッパで人気のあるユーロリーグのクラブを取り込み、一緒に新リーグを作ろうという内容だった。

ところが、ユーロリーグ側の反応は厳しかった。報道によると、会議では「植民地主義的だ」という言葉まで出たという。バルセロナは「冗談のような提案」と受け止め、ギリシャのオリンピアコスはもっとも強く反対したと報じられている(ARA)。

数字で見ると:NBAの“1球団”でユーロリーグが6つ買える

交渉がこじれた最大の理由は、お金の規模の違いだ。ロイターの報道では、ユーロリーグ全体の値段の目安は14.1億ユーロ、ドルにすると約15.9億ドル(約2,400億円)とされる。

一方、NBAのほうはどうか。このサイトでも解説したとおり、NBAがラスベガスに作る新球団の加盟料はおよそ100億ドル(約1.5兆円)の見込みだ(「NBAのラスベガス新球団は「加盟料100億ドル」」)。つまり、NBAの新球団1つの値段で、ユーロリーグ全体が6つ以上買えてしまう。NBA全体の1年の収入は140億ドルを超えるとされ、ユーロリーグ全体の値段のおよそ9倍にあたる。

比べやすいように、NBAの1チームが選手に払う年俸の合計は2億ドル前後だ(「ぜいたく税ラインを超えた13チーム」)。ユーロリーグ全体の値段は、NBAの8チーム分の1年の年俸とほぼ同じくらいしかない。

NBAとヨーロッパ、お金の規模の違い

すべて報道ベース。NBAの年間収入は2025-26、ユーロリーグの値段はロイターの報道、NBAヨーロッパの1チームはNBAが希望していると報じられた最低ライン。単位は億ドル
NBA全体の1年の収入
140.0億ドル
ラスベガス新球団の加盟料(見込み)
100.0億ドル
ユーロリーグ全体の値段
15.9億ドル
NBAヨーロッパの1チーム(NBAの希望の下限)
5.0億ドル

なぜ断ったのか:値段と「拡大をやめろ」の2つ

これだけ規模が違うなら、NBAと組んだほうが得ではないか。そう思うかもしれないが、ユーロリーグ側にも言い分がある。

1つ目は値段だ。Yahoo Sports(Sportico)によると、ユーロリーグ側は最低でも30億ドルの価値があると考えていたが、NBAの提案は「まったく届いていなかった」という。スペインのARAは、ユーロリーグ側がほのめかしていた20億ユーロを大きく下回ったと伝えている。報道によって数字は違うが、NBAの提示が相手の期待より大幅に低かったことは共通している。NBAの提案は、すぐ払う分と、新リーグの成績に応じて後から払う分の2段構えだったとされる(イル・ソーレ・24オーレ)。

2つ目は条件だ。NBAは13クラブをそのまま残す代わりに、新リーグのためにユーロリーグの拡大計画を止めるよう求めたと報じられた。ユーロリーグは現在の20チームを2027-28シーズンから24チームに広げる計画を進めており、今季はテレビの視聴者も大きく伸びている(ロイターによると開幕25節で82%増)。成長している最中に「拡大をやめろ」と言われたことが、オーナーたちの反発を招いた。ある関係者は「時間とお金をかけてきたオーナーたちには受け入れがたかった」と話している(Yahoo Sports)。

NBAヨーロッパの16チームの内訳(計画)

NBAとFIBA(国際バスケットボール連盟)の計画。12チームは降格のない“固定”の球団で、残り4つは各国リーグの成績などで決まる枠
  • 固定の12チーム(降格なし)75%
  • 成績で入れ替わる4チーム25%

NBAヨーロッパはどうなるのか

NBAはユーロリーグと組めなくても、計画を進める構えだと報じられている。NBAヨーロッパは16チームで、そのうち12チームは降格のない“固定”の球団、残り4チームは各国リーグの成績などで入れ替わる仕組みだ。固定の球団を持つ権利について、NBAは1チーム5億ドル以上を希望していると報じられ(NBC Sports)、10億ドルを超える提案も複数集まったという。中東の政府系ファンドや、欧州サッカーに投資してきた米国の投資会社なども名前が挙がっている。

ただし、課題は多い。ヨーロッパの人気クラブはほとんどがユーロリーグに入っており、レアル・マドリードやバルセロナのような名門を抜きにして新リーグを始めても、ファンが集まるかはわからない。逆に、ユーロリーグの中にもNBAと組みたいクラブはある。レアル・マドリードは、NBAに条件を見直す時間として30日がほしいと求めたと報じられている(ARA)。ユーロリーグは「交渉の扉は閉じていない」としており、今回の拒否は交渉の終わりではなく始まりと見るのが自然だ。

時期については、ロイターが「両者が組むとしても2028年より前は難しい」と伝えている。新しいリーグを1年で立ち上げるのは簡単ではなく、2027年10月の開幕目標が守れるかどうかも、この先の交渉しだいだ。

NBAが求めたこと、ユーロリーグが望むこと

ロイター、Yahoo Sports(Sportico)、ARA(スペイン)などの報道をもとに整理
NBAの提案
ユーロリーグの考え
クラブの扱い
13クラブはそのまま残し、NBAヨーロッパの“球団”に組み込む
13クラブを自前で“永久の球団”に切り替える(60日以内に決める見込み)
リーグの拡大
ユーロリーグの拡大は止めてほしい
20チームから24チームへ広げる計画を続ける
値段
すぐ払う分+成績に連動する分の2段構え
最低でも30億ドル、または20億ユーロ規模を求めたとされる
時期
2027年10月に開幕したい
組むとしても2028年以降が現実的

日本のファンにとっての意味

NBAがヨーロッパにここまで力を入れるのは、アメリカ国内だけではもう大きく伸びにくいからだ。いまのNBAは、MVPが8年連続でアメリカ国外生まれの選手になるほど、海外出身の選手が主役になっている(「MVPは8年連続で“アメリカ国外生まれ”」)。ヨキッチ、ヤニス、ドンチッチ、ウェンバンヤマはみなヨーロッパ出身で、ヨーロッパは選手の供給源としても、ファンを増やす市場としても、NBAにとって欠かせない場所になっている。

興味深いのは、日本のBリーグも今季から、成績による降格をなくし、売上や観客数、アリーナの基準でトップリーグの顔ぶれを決める「B.LEAGUE PREMIER」を始めたことだ。“降格のない固定の球団”でリーグの価値を上げるという考え方は、NBAヨーロッパの計画や、ユーロリーグが進める“永久の球団”への切り替えと同じ方向を向いている。アメリカ型のリーグの作り方が世界に広がっていると言える。

もしNBAヨーロッパが実現すれば、NBAの次の目はアジアに向く可能性もある。日本はNBAの試合の視聴者が多く、八村塁や河村勇輝のように日本人選手もプレーしている(「日本人NBA選手一覧」)。ヨーロッパでの交渉がどうまとまるかは、遠い話のようでいて、日本のバスケットの将来にもつながっている。NBAの新しい提案が出たら、このサイトで続報をまとめる。

この先の流れ(予定)

日程はすべて報道ベース。正式な合意や決定はまだない
  1. 1
    2026年10月6日

    イタリア・コモ湖畔のチェルノッビオで株主会議。NBAの最初の提案を拒否。

  2. 2
    1か月以内

    ユーロリーグが新しく加えるクラブを決める見込み。NBAはその前に新しい提案を出す可能性がある。

  3. 3
    60日以内

    13クラブを“永久の球団”にする仕組みを正式に決める見込み。

  4. 4
    2027年10月

    NBAヨーロッパの開幕目標。ユーロリーグと組まずに進める可能性もある。

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