この記事のポイント
- ハリバートンが**472日ぶり**にプレシーズン戦で復帰。前半16分で7点・6アシスト、本人は「制限なし」と話す
- いなかった昨季のペイサーズは**19勝63敗**。前の年(50勝・ファイナル進出)から31勝も減った
- 最下位2番目でも、抽選の結果は5位。上位4位の約束を外れ、**指名権はクリッパーズへ**渡った
- 今季の年俸は約4,892万ドル(約73億円)で、契約は2028-29まで。新しい戦力を足す手段が限られる中、ハリバートンの回復がそのまま再建の速さになる
数字で見るハリバートンの復帰
2025年NBAファイナル第7戦でけがをしてから、復帰戦までの日数
ハリバートンがいなかった昨季の勝ち星(63敗、球団史上最悪)
復帰戦の前半16分で記録(ほかに7点)
今季の年俸(約4,892万ドル)。契約は2028-29まで
472日ぶりのコート、場所は母校のある町
ペイサーズのタイリース・ハリバートンが、10月7日(現地)のティンバーウルブズとのプレシーズン戦で、ついにコートに戻ってきた。会場は、本人が大学時代を過ごしたアイオワ州立大学のあるアイオワ州エイムズ。2025年6月22日のNBAファイナル第7戦で右のアキレス腱を切ってから、472日ぶりの試合だった。
前半だけで16分出場し、7点・6アシスト(ESPN・CBS Sportsの速報値)。シュートは8本中3本成功と本調子ではなかったが、前半の終盤にはプルアップの3ポイントを沈め、終了間際には自らドライブしてレイアップを決めた。アーロン・ネスミスの3ポイントやパスカル・シアカムのレイアップを演出したパスは、けがをする前のハリバートンそのものだった。
本人は9月末のメディアデーで「健康で、100%の状態。制限はない」と話していた(ESPN)。リック・カーライルHCは「メディカルスタッフと相談しながら、正しいペースで進める」としつつ、出場時間を大きく絞るつもりはないという考えを示している。
ペイサーズの勝ち星(レギュラーシーズン82試合)
50勝から19勝へ。いなくなって分かった大きさ
ハリバートンがどれほど大きな存在だったかは、ペイサーズの勝ち星を並べると分かりやすい。彼を中心に戦った2023-24は47勝で東の決勝まで進み、2024-25は50勝でNBAファイナルの第7戦まで勝ち上がった。ところが全休した2025-26は19勝63敗。球団の歴史で最も悪い成績で、勝ち星は前の年から31も減った。
もちろん、負けた理由はハリバートン1人ではない。昨季はほかの主力にもけがが続き、エースのシアカムは平均24.0点、代わりに司令塔を務めたアンドリュー・ネンバードは平均7.7アシストと奮闘した。それでも勝ち星は伸びず、プレーオフには届かなかった。
ハリバートンは、2024-25に平均18.6点・9.2アシストを記録した、リーグ屈指のパサーだ。点を取るだけでなく、速攻の起点になり、味方のシュートを“打ちやすい形”にする。こういう選手は、いなくなったときにチーム全体の数字が一気に落ちる。ペイサーズの19勝は、その分かりやすい例と言える。
抽選前、ペイサーズが指名権を残せる確率
- 上位4位に入って残る52%
- 5位以下でクリッパーズへ48%
負けたのに指名権が残らなかった理由
普通、これだけ負けたチームには“ごほうび”がある。翌年のドラフトで上位の指名権を得られる可能性が高くなるからだ(仕組みは「NBAドラフトの仕組み」で解説している)。ペイサーズはリーグで2番目に悪い成績だったため、抽選(ロッタリー)の前の時点で、全体1位を引ける確率は14.0%、上位4位に入る確率は52.1%あった。
ところが、この年の1巡目指名権には条件が付いていた。ペイサーズは2026年2月5日、センターのイビツァ・ズバッツを獲得するトレードで、クリッパーズにベネディクト・マサリン、アイザイア・ジャクソン、2029年の1巡目指名権などと一緒に、2026年の1巡目指名権を「上位4位なら手元に残す」という条件付きで渡していた(こうした条件付きの指名権をプロテクトと呼ぶ)。
5月の抽選の結果は5位。上位4位にわずかに届かず、指名権はクリッパーズのものになった。クリッパーズはこの5位でイリノイ大学のキートン・ワグラーを指名し、八村塁や河村勇輝のチームメイトになっている。ペイサーズは最悪の成績を残しながら、若手の有望株という“見返り”を手にできなかった。SIは「つらいシーズンに何も残らなかった」と書いている。
アキレス腱を切ったスターの復帰までの期間
再建のカギはハリバートン1人に
ここがいちばん大事なポイントだ。負けたチームが立て直すには、ふつう①ドラフトで若手を取る、②FAやトレードで選手を集める、③けが人が戻る、の3つの道がある。ペイサーズは①を失い、②もズバッツのトレードで将来の指名権を使ったため、手札が少ない。残っているのが③、つまりハリバートンの回復だ。
お金の面でも、ハリバートンはチームの中心にいる。2023年に結んだ5年の延長契約は、オールNBAに選ばれたことで約2.45億ドル(約367億円)に増え、今季の年俸は約4,892万ドル(約73億円)。契約は2028-29まで続く(Spotrac、ShamSportsによる)。これだけの額を払う選手が元のレベルに戻れば、ペイサーズはズバッツ、シアカム、ネンバードと合わせて、2024-25に近い形のチームを組み直せる。逆に戻らなければ、高い年俸が補強の重しになる。
参考になるのは、同じくアキレス腱を切ったスターたちだ。2019年のファイナルで切ったケビン・デュラントは約1年半後に戻り、復帰後も平均25点以上を取るエースであり続けた。2025年5月に切ったジェイソン・テイタムは、約10か月で戻って昨季終盤の16試合に出た。ハリバートンは約1年4か月と、急がずに時間をかけた。プレーの速さと判断で勝負するハリバートンにとって、この時間がどう効くかが注目だ。
この先の見どころ
- 1プレシーズン
残りの試合で出場時間がどこまで伸びるか。カーライルHCは「正しいペースで進める」と話している。
- 210月20日〜
レギュラーシーズン開幕。連戦(2日続けての試合)に出るかどうかが、回復ぶりを見る目安になる。
- 3シーズン中盤
アワードやオールNBAの対象になるには原則65試合以上の出場が必要。けがなく出続けられるか。
- 42027年春
東のプレーオフに戻れるか。昨季19勝からの巻き返しの幅が、ハリバートンの価値をそのまま表す。
見るべきは「連戦」と「65試合」
プレシーズンの1試合だけで、元に戻ったかどうかは分からない。見るべきポイントは2つある。1つ目は、10月20日に始まるレギュラーシーズンで、2日続けての試合(連戦)に両方出るかどうか。アキレス腱のけがから戻った選手は、最初のうち連戦の片方を休むことが多く、ここが“本当の回復”の目安になる。
2つ目は出場試合数。MVPやオールNBAなどのアワードは、原則65試合以上出ないと選ばれない(「NBAのアワード一覧と「65試合ルール」」)。ハリバートンの契約が増えたきっかけもオールNBA選出だった。けがなく65試合以上に出て、東のプレーオフ争いにチームを戻せるか。昨季の19勝からどこまで勝ち星を積み上げられるかが、そのままハリバートンの価値を表すことになる。
ペイサーズの今季の顔ぶれはペイサーズのチームページ、主な選手の年俸は年俸ランキングで確認できる。指名権を受け取ったクリッパーズ側の話は「ストラスの離脱でクリッパーズは“年俸の3分の1”が欠場」でも触れている。