この記事のポイント
- マーク・ウォルターが、2025年に**100億ドル**で買ったレイカーズを、14か月後に**125億ドル**でジョシュ・クシュナーとボブ・アイガーのグループに売ることで合意した
- バス家の信託に残る**17.82%**も一緒に売れば、家族には約22億ドル(約3,300億円)が入る。きょうだい5人は売却に賛成
- NBAではチームの代表になるのに**15%以上の持ち分**が必要。売ればジーニー・バスは代表を続けられなくなる
- 11月にNBAのオーナー会議の投票、12月8日に裁判所の審問。どちらが先に動くかで、レイカーズの“顔”が変わる
数字で見るレイカーズの売却
今回の売却で付いたレイカーズ全体の値段(125億ドル)。アメリカのプロチームで史上最高
バス家の信託(家族でまとめて持つ財産)に残っているレイカーズの持ち分
その持ち分を売ったときに家族が受け取る額(約22億ドル)
チームの代表としてオーナー会議に出るのに必要な持ち分
きょうだい5人と、反対するジーニー
10月7日(現地)、レイカーズの元オーナー一家であるバス家のきょうだい5人(ジム、ジョニー、ジェイニー、ジョーイ、ジェシー)が、ロサンゼルスの裁判所に36ページの書面を出した。相手は、レイカーズの代表(ガバナー)を務める姉のジーニー・バスだ。5人は声明で、ジーニーの訴えを「法的にも事実の上でも根拠がない」とし、「取引を予定どおり進めるために必要な手続きだ」と説明している(ESPN、Yahoo Sports)。
争いの元になっているのは、バス家の信託(家族で財産をまとめて持つ仕組み)に残るレイカーズの持ち分17.82%だ。5人は8月、この持ち分を、新しくレイカーズを買うグループに一緒に売ると決めた。ジーニーは決定に加わっておらず、8月に97ページの申し立てで「投票は無効」と訴え、きょうだいのうち信託の管理役を務めるジョーイとジェイニーを外すよう求めている。
示談の話し合いもあったが、まとまらなかった。家族のなかでの意見の違いが、そのまま裁判の場に持ち込まれた形だ。
レイカーズの持ち分(売却前)
- ウォルター側など、ほかの持ち分82%
- バス家の信託18%
14か月で25億ドル上がったレイカーズの値段
背景には、レイカーズ自体の売却がある。父ジェリー・バスがレイカーズを買ったのは1979年。本拠地のフォーラムなどと合わせて約6,750万ドルだった。それから40年以上たった2025年、家族は持ち分の大半を、大谷翔平のいるドジャースのオーナーとしても知られるマーク・ウォルターに売り、チーム全体の評価額は100億ドル(約1.5兆円)と、当時のアメリカのプロチームで最高額になった。NBAの承認が下りたのは2025年10月30日だ。
ところが2026年8月、ウォルターはわずか14か月で、ジョシュ・クシュナー(ベンチャー投資家)とディズニーの元CEOボブ・アイガーのグループにレイカーズを売ることで合意した。評価額は125億ドル(約1.9兆円)。ウォルターは1年ちょっとで約25億ドル、日本円で3,700億円以上の値上がり益を手にする計算になる。2025年にセルティックスが61億ドルで売れたときも「史上最高」と騒がれたが、レイカーズはその約2倍だ。
今回の契約には、少数の持ち分を持つ株主も同じ条件で一緒に売れる取り決め(タグ・アロング)があるとされ、きょうだい5人はこれを使った。17.82%を125億ドルで計算すると、家族が受け取るのは約22億ドル(約3,300億円)になる。
アメリカのプロチームの主な売却額
ジーニーの立場を決める「15%」
なぜジーニーだけが反対するのか。理由ははっきりしている。NBAでは、オーナー会議に出てチームを代表するガバナーになるには、そのチームの持ち分を15%以上持っている必要がある(Yahoo Sportsなど)。バス家の信託の17.82%は、この基準をぎりぎり上回っている。これを売れば家族の持ち分はゼロになり、ジーニーは代表を続けられない。
ウォルターが2025年に筆頭オーナーになったとき、ジーニーがその後5年間、代表と経営の責任者を続ける約束が結ばれた。アイガーも8月、この約束を守ると話している。ただ、その前提になるのが家族の15%以上の持ち分だ。持ち分がなくなれば、約束そのものが成り立たなくなる。
きょうだい5人は、この点を突いている。反論の書面では、ジーニーは自分の地位を守るために動いており、信託の管理役として家族全員の利益を考える義務に反していると主張した。一方のジーニーは、2017年の裁判所の命令を根拠に、自分の同意なしには売れないと訴え、レイカーズの値段は上がり続けているのだから今売るのは家族にとっても損だと反論している。
“家族のお金”と“チームの顔”、どちらが重いか
数字だけを見れば、5人の言い分には分かりやすさがある。約22億ドルを単純に6人で割ると、1人あたり約3.7億ドル(約550億円)。信託からどう分けるかは公表されていないので実際の額は違うが、それでも一生使い切れない額だ。しかも、筆頭オーナーではない17.82%の持ち分は、チームの方針を決める力が弱い。新しいオーナーの下で少数株主として残るより、記録的な値段が付いた今のうちに売りたいと考えるのは自然だ。
ジーニーの言う「値段は上がり続ける」も、根拠のない話ではない。100億ドルが14か月で125億ドルになったように、NBAのチームの値段は放映権料の大幅な値上がりやラスベガスなど新球団の加盟料(「ラスベガス新球団は加盟料100億ドル」)に押し上げられてきた。ただ、上がり続ける保証はなく、どちらが正しいかは結局、お金を取るか、父から受け継いだ“チームの顔”の役割を取るかという価値観の違いになる。
1979年から続いてきたバス家とレイカーズの関係は、ジーニーが代表を外れれば、事実上ここで終わる。マジック・ジョンソン、シャック、コービー、レブロン。日本で見ていても、レイカーズの黄金期にはいつもバス家の存在があった。今回の争いが単なるお金の話に見えないのはそのためだ。
この先の日程
- 110月7日
きょうだい5人が、ジーニーの訴えに正式に反論する書面を裁判所に出す。
- 211月
NBAのオーナー会議(29チームのオーナー)で、新オーナーへの売却を承認するかの投票が予定されている。
- 312月8日
ロサンゼルスの裁判所で審問。家族の持ち分を売れるかどうかの判断が出る可能性がある。
- 4その後
売却が認められればジーニーは代表を外れ、退けられれば17.82%を持ったまま代表を続ける。
11月の承認と12月の審問、順番がカギ
これからの日程は少しややこしい。ESPNによると、クシュナーとアイガーのグループへの売却は、11月のNBAオーナー会議の投票で承認される見込みだ。一方、家族の持ち分を売れるかどうかを決める裁判所の審問は、ジーニー側の弁護士の都合で11月5日から12月8日に延びた。つまり、新オーナーが先にチームを手にし、家族の持ち分の扱いだけがあとに残る可能性がある。
考えられる結果は2つ。裁判所が5人の主張を認めれば、17.82%も新オーナー側に移り、ジーニーは代表の座を降りる。ジーニーの主張が通れば、家族は持ち分を持ったまま残り、5年間の約束どおりジーニーが代表を続ける。和解して一部だけ売り、15%は残すという道もあり得るが、いまのところそうした報道はない。
コートの上では、ルカ・ドンチッチを中心にした新しいシーズンが始まる。オーナーが代わっても、補強や年俸の判断を実際に下すのは編成の責任者たちで、すぐにチームの戦い方が変わるわけではない。ただ、125億ドルを払った新オーナーが、どこまでお金を使って勝ちに行くのかは、これから注目していきたい。レイカーズの選手の年俸は年俸ランキング、チームの歴史や今季の顔ぶれはレイカーズのチームページで確認できる。NBAのオーナーの資産については「NBA30チーム オーナー資産ランキング」でもまとめている。