この記事のポイント
- 2023年の新CBAで導入された支出制限ライン
- 2ndエプロン超過チームは補強手段が大きく制限される
- ミッドレベル例外、年俸合算トレード、現金付きトレードなどに影響
- 複数年超過すると将来の1巡目指名権にもペナルティが及ぶ
- スター軍団をお金だけで維持しにくくするための制度
数字で見る2ndエプロン
新CBAで導入
キャップから2ndエプロンまでの年俸ライン
制限される補強手段(本文の表)
2ndエプロンとは何か
2ndエプロン(セカンドエプロン)は、NBAのサラリーキャップ制度における新しい支出制限ラインだ。2023年の新労使協定、いわゆるCBAで導入され、現在のチーム作りにかなり大きな影響を与えている。
NBAの年俸ラインは、ざっくり言えばサラリーキャップ、ラグジュアリータックス、1stエプロン、2ndエプロンの順に厳しくなる。サラリーが上がるほど税金だけでなく、使える補強手段も減っていく。2ndエプロンはその中でもかなり重いゾーンだ。
年俸ラインの4段階
- 1サラリーキャップ
総年俸の上限の目安。NBAは例外規定を使えば超えられる。
- 2ぜいたく税
超えた額に応じて、リーグに税金を納める。
- 31stエプロン
2023年の新CBAで追加。補強手段が減り始める。
- 42ndエプロン
補強手段そのものが大きく制限される。
サラリーキャップとの違い
NBAはソフトキャップ制なので、サラリーキャップを超えたら即アウトというリーグではない。バード権、ミッドレベル例外、ルーキー契約などを使えば、キャップを超えても選手を残したり補強したりできる。
ただ近年は、資金力のあるオーナーが巨額のラグジュアリータックスを払い、スターを何人も抱えるチームを作るケースが増えた。ウォリアーズ、サンズ、クリッパーズのようなチームが、その象徴としてよく語られる。そこでNBAは、お金を払えば何でもできる状態を止めるために2ndエプロンを作った。
超えるとミッドレベル例外が使えない
2ndエプロンを超えて一番分かりやすく痛いのが、ミッドレベル例外を使った補強ができなくなることだ。通常の強豪チームは、優勝を狙う最後のピースとして、ベテランを少し安く獲得するためにこの例外を使う。
しかし2ndエプロン超過チームは、そのルートがほぼ消える。つまり、スターを高額契約で抱えた後に『足りないロールプレイヤーを例外で補う』という動きがかなり難しくなる。
トレードの自由度も大きく下がる
2ndエプロンの怖さはFA補強だけではない。トレードでもかなり重い制限がかかる。代表的なのが、複数選手の年俸をまとめて大きな契約の選手を取りに行く動きができなくなることだ。
例えば500万ドル、600万ドル、700万ドルの選手をまとめて、1800万ドルの選手を獲得するような動きが難しくなる。これはスター獲得やロスター整理に直撃する。さらに現金を付けたトレードや、過去のトレード例外を使う動きにも制限がかかるため、細かい調整もしにくくなる。
バイアウト市場とドラフト指名権にも影響する
シーズン後半になると、優勝候補はバイアウト市場からベテランを拾って戦力を整えることがある。ところが、一定以上の年俸だったバイアウト選手は、1stエプロンを超えた時点で獲得できなくなる。2ndエプロンを超えたチームはもちろん同じで、優勝前の最後の補強カードまで制限されるわけだ。
さらに怖いのがドラフト指名権のペナルティだ。2ndエプロンを超えたチームは将来の1巡目指名権の扱いに制限を受け、複数年にわたって超過すると、その指名権が1巡目の最後尾へ移動するリスクがある。強豪チームにとって、これは未来を削られるかなり重い罰になる。
2ndエプロンを超えるとできなくなること
影響を受けたチーム
サンズは分かりやすい例だ。ケビン・デュラント、デビン・ブッカー、ブラッドリー・ビールの高額契約を抱えたことで、補強の自由度が大きく下がった。スターの名前は豪華でも、周りをどう埋めるかが一気に難しくなる。
ティンバーウルブズも、アンソニー・エドワーズ、カール=アンソニー・タウンズ、ルディ・ゴベアを抱えたことで将来の財政問題と向き合う必要が出た。その流れの中でタウンズのトレードにつながったと見ることもできる。セルティックスも優勝後に大型契約が重なり、今後数年は2ndエプロンとの戦いになる。
これからは運営力の時代になる
以前なら、スター4人と豪華ベンチをお金で維持する道もあった。しかし2ndエプロン時代は、スター2〜3人、若手育成、ドラフト活用、安い契約のロールプレイヤー発掘がより重要になる。
つまり、NBAは『お金よりもチーム運営力が重要な時代』に入ったと言える。優勝を目指すには選手を集めなければならない。でも集めすぎると、今度は身動きが取れなくなる。このバランスこそ、現代NBAのフロント最大の課題だ。
まとめ
2ndエプロンは、2023年CBAで導入された新しい支出制限ラインだ。単なる税金ではなく、補強手段そのものを制限する。ミッドレベル例外、トレード、バイアウト市場、将来のドラフト指名権にまで影響するため、チーム作りへのダメージはかなり大きい。
NBAがここまで厳しくした理由は、リーグ全体の戦力均衡を守るためだ。お金があるチームだけが勝つ状況を避け、強豪にも運営力を求める。2ndエプロンは、現代NBAを理解するうえで必ず押さえておきたいルールになっている。
1stエプロンと2ndエプロン、どこから何が制限されるか
制限は2ndエプロンでいきなり始まるわけではない。1stエプロンを超えた時点で、すでにいくつかの手段が使えなくなる。たとえば、通常のミッドレベル例外は小さい“タックスペイヤー版”しか使えなくなり、トレードで受け取れる年俸も、出す年俸の110%までに抑えられる。先に書いたバイアウト選手の獲得制限も、この1stエプロンから始まるものだ。
2ndエプロンを超えると、そこからさらに、タックスペイヤー版も含めたミッドレベル例外そのものや、複数選手の年俸を合算するトレード、現金を付けたトレードが使えなくなる。1stエプロンが「補強の選択肢が細る線」だとすれば、2ndエプロンは「補強の手段そのものがほとんど消える線」と考えると分かりやすい。
指名権のペナルティの中身
ドラフト指名権のペナルティは、段階的にかかる仕組みになっている。2ndエプロンを超えたシーズンがあると、そのチームの7年後の1巡目指名権は“凍結”され、トレードに出せなくなる。
さらに、その後の5シーズンのうち3シーズンで2ndエプロンを超えると、凍結された指名権は、成績に関係なく1巡目の最後(30番目)に回される。目先の補強のために高い年俸を払い続けるほど、何年も先のチームの未来が削られていく、というのがこのルールの狙いだ。

