この記事のポイント
- ポジェムスキーは**5年1.1億ドル(約174億円)**の全額保証の延長に合意。5年目は双方が選べるオプション付き
- 1年あたり2,200万ドルは、交渉の幅とされた「チーム1,600万〜1,800万ドル、選手側2,000万〜2,400万ドル」の上のほう(報道ベース)
- ただし延長しなくても来夏は約1,700万ドルが“仮の年俸”として数えられていたので、**空きから減るのは約190万ドルだけ**
- カリーも上限より約2,000万ドル少ない額で延長。バトラーとグリーンの契約が終わる来夏、空きは**最大5,500万〜6,000万ドル**の見込み
- 2023年ドラフト組の延長は5人目。期限の10月19日まで、ナゲッツのストローサーらの交渉が続く
数字で見るポジェムスキーの延長(1ドル=158円で換算)
5年の総額(約174億円)。全額保証
延長1年目(2027-28)の年俸(約30億円)
延長で、来夏に使えるお金から減る分(約3億円)
2023年ドラフト組で延長にサインした選手
19位指名の23歳に5年1.1億ドル。2023年組で5人目の延長
10月10日(現地)、ESPNのシャムズ・シャラニア記者が、ウォリアーズのブランディン・ポジェムスキーが5年1億1,000万ドル(約174億円)の延長に合意したと伝えた。代理人のビル・ダフィー氏がESPNに認め、ウォリアーズも同じ日に正式に発表している(Hoops Rumors、NBA.com)。全額保証で、5年目(2031-32)は選手とチームの双方が選べるオプション、トレードされたときに上乗せがつく条項(100万ドルか、残りの年俸の15%の少ないほう)も入った。
ポジェムスキーは2023年のドラフトで19位指名された23歳のガードだ。ルーキー契約の最後の年になる今季の年俸は約560万ドル(約9億円)。延長は来季から始まり、1年目が約1,890万ドル、そこから毎年8%ずつ上がって、5年目は約2,500万ドルになる(Hoops Rumors)。
2023年ドラフト組のルーキー延長は、これで5人目になった。1週間前に「ルーキー延長の期限まで2週間。2023年ドラフト組は23人中4人しかサインしていないのはなぜか」で書いたとおり、それまでにサインしていたのはウェンバンヤマ、アメン・トンプソン、オーサー・トンプソン、キーオンテ・ジョージの4人。4人はいずれも16位以内の指名で、19位のポジェムスキーは、ここまででいちばん下の順位からの延長になる。
平均13.8点に年2,200万ドルは高いのか
昨季のポジェムスキーは82試合すべてに出場し(先発は43試合)、平均28.5分で13.8点・5.1リバウンド・3.7アシスト。出場時間はチームでいちばん長かった。3年間の通算ではフィールドゴール成功率45.2%、3ポイント成功率37.5%で、得点は1年目から毎年伸びている(NBA.com、Hoops Rumors)。
ただ、平均13.8点の選手に1年あたり2,200万ドル(約35億円)と聞くと、高いと感じる人もいるだろう。報道ベースでは、延長前の交渉の幅はウォリアーズ側が1年1,600万〜1,800万ドル、選手側が2,000万〜2,400万ドルとされていた(ClutchPoints)。Spotracは4年6,400万ドル、ClutchPointsのブレット・シーゲル記者は4年7,000万ドルと予想していたので、実際の額は期間も金額も予想を上回った。交渉の結果としては、選手側の希望に近いところで決まったことになる。
一方で、同じ2023年組と比べると、ポジェムスキーは“いちばん安い延長”でもある。1年あたりで見ると、ウェンバンヤマが約5,040万ドル、アメンが約4,160万ドル、オーサーとジョージが約3,100万ドル。ポジェムスキーの2,200万ドルは、オーサーやジョージより約900万ドル低い。今季のサラリーキャップ(約1億6,496万ドル)と比べると約13%で、キャップは毎年上がるので、契約の後半ほどチームの中での重さは軽くなっていく。延長の値段がどう決まるかは、デュレンの延長の記事でも整理している。
2023年ドラフト組の延長(1年あたりの額)
来夏の空きから減るのは190万ドルだけ
ウォリアーズにとって、この延長のいちばん大事な点は金額そのものよりタイミングだ。延長しなければ、ポジェムスキーは来夏に制限付きFAになる。その場合でもチームは選手を引き留める権利を持つが、その権利を持っているあいだは、キャップホールドと呼ばれる“仮の年俸”(ポジェムスキーの場合は約1,700万ドル)がチームの年俸に数えられる。
つまり、延長してもしなくても、来夏の計算には約1,700万ドルが入っていた。延長1年目の年俸は約1,890万ドルなので、延長で来夏に使えるお金から減るのは約190万ドル(約3億円)、来季の年俸の1割ほどにすぎない。そのかわりに、制限付きFAで他のチームに高いオファーを出され、それに合わせて払う額が上がるリスクを消せた。ESPNのボビー・マークス記者も、この延長で来夏の空きはほとんど変わらないと見ている(Hoops Rumors)。
9月26日には、ステフィン・カリーとも2年1億1,600万ドルで延長した。カリーは最大で約1億3,670万ドルまで求められたが、約2,000万ドル少ない額を選び、来季の年俸は今季の約6,260万ドルから約5,570万ドルに下がる(NBC Sports、NBA.com)。ESPNによると、これで来夏の空きは約1,000万ドル増える。2人の延長は、どちらも来夏のために“空き”を残すという同じ方向を向いている。
ポジェムスキーの来季の年俸1,890万ドルのうち、延長で新たに増えた分
- 延長で増えた分10%
約190万ドル(約3億円)
- 延長しなくても押さえていた分90%
約1,700万ドル(約27億円)
バトラーとグリーンの契約が終わる来夏に、最大6,000万ドル
ウォリアーズが来夏を大事にするのは、大きな契約が2つ終わるからだ。ジミー・バトラーの今季の年俸は約5,680万ドル、ドレイモンド・グリーンは約2,760万ドルで、どちらも今季かぎりで契約が切れる。クリスタプス・ポルジンギスは来季の約2,000万ドルのうち保証が約300万ドルしかなく、健康上の問題で無期限の離脱が発表されている(Hoops Rumors)。
マークス記者の試算では、ポジェムスキーの延長のあとでも、来夏のウォリアーズには5,500万〜6,000万ドル(約87億〜95億円)の空きができる可能性がある。サラリーキャップの分析で知られるヨッシ・ゴズラン氏は、最大約6,400万ドルという数字を出している。ただし、これはバトラーとグリーンと再契約しない(または大きく下げた額で再契約する)場合の数字だ。いま30チームでいちばん総年俸が多いウォリアーズ(約2億2,084万ドル、ウォリアーズの年俸)が、1年で“お金を使えるチーム”に変わる可能性がある。
昨季のウォリアーズは37勝45敗で西10位。プレーイン・トーナメントには出たがプレーオフには進めず、2020年以来の負け越しになった。バトラーは1月にひざの前十字靭帯を痛めてシーズンを終えている。38歳のカリーが現役のうちに、もう一度優勝を狙えるチームを作るには、来夏の空きが最後の大きなチャンスになる。ポジェムスキーの延長は、そのチャンスを削らずに、カリーのあとも残る若い軸を確保する一手だった。
ウォリアーズの来夏までの日程
- 19月26日
カリーと2年1.16億ドルで延長。上限より約2,000万ドル少ない額にした
- 210月10日
ポジェムスキーと5年1.1億ドルで延長
- 310月19日
ほかの2023年ドラフト組のルーキー延長の期限
- 42027年夏
バトラー(5,680万ドル)とグリーン(2,760万ドル)の契約が終わる。空きは最大5,500万〜6,000万ドルの見込み
ナゲッツのストローサーはどうなるか
残る2023年組の期限は、現地10月19日の午後5時(アメリカ中部時間)、日本時間では20日の朝7時だ。2位指名のブランドン・ミラー(ホーネッツ)、八村塁と河村勇輝のチームメイトのグレイディ・ディック(クリッパーズ)、そしてナゲッツのジュリアン・ストローサーも、まだサインしていない。
ナゲッツを応援している立場からすると、ポジェムスキーの延長はストローサーの交渉の物差しにもなる。昨季のストローサーは平均7.2点で、ポジェムスキーより出場時間も役割も小さい。ポジェムスキーの1年2,200万ドルは、ストローサーにとっての“上限の目安”になるはずだ。ナゲッツはいまリーグで唯一2ndエプロン(ルールで決まった使えるお金の上限)を超えているので、延長するならポジェムスキーよりかなり低い額に抑えたいところだ。決まらなければ、ストローサーは来夏に制限付きFAになる。
ルーキー延長やFAの仕組みは「NBAのFAとは?」、キャップの基本は「NBAサラリーキャップの仕組み」でまとめている。ナゲッツの年俸はナゲッツの年俸一覧、ウォリアーズの本拠地に観に行くなら「チェイス・センター観戦ガイド」も参考にしてほしい。期限の10月19日を過ぎたら、2023年組の延長の結果をまとめて追う。