時事解説時事 / 契約・ルーキー延長

ルーキー延長の期限まで2週間。2023年ドラフト組は23人中4人しかサインしていない理由を数字で読む

ー ウェンバンヤマは5年2.52億ドル、アメンは2.08億ドル。ブランドン・ミラー、グレイディ・ディック、ストローサーの“値段”はいくらになるか ー

NBAのルーキー契約は4年。2023年のドラフト1巡目で入った選手たちは、今季が最後の年になる。チームと延長を結べるのは現地10月19日まで。ところが、延長の資格がある23人のうち、サインしたのはウェンバンヤマら4人だけだ。なぜ残りの選手は決まらないのか。ブランドン・ミラー、クリッパーズのグレイディ・ディック、ナゲッツのジュリアン・ストローサーを例に、延長の“値段の決まり方”を数字で読み解く。

この記事のポイント

  • 2023年ドラフト組のルーキー延長の期限は**現地10月19日(日本時間20日朝)**。資格のある23人のうちサインは4人だけ
  • ウェンバンヤマは5年約2.52億ドル。オールNBA入りで選べた30%(約3.03億ドル)ではなく、25%を選んだ
  • トンプソン兄弟は同じ5年でも**5,300万ドルの差**。延長の金額は「これからの伸びしろ」で決まる
  • 2位指名のブランドン・ミラーは今季年俸約1,510万ドル。5年1.91億ドル前後という予想がある
  • 八村塁と河村勇輝のチームメイトになったグレイディ・ディック、ナゲッツのストローサーも延長の対象

数字で見る2023年ドラフト組の延長(1ドル=150円で換算)

4/23人

延長にサインした選手(10月上旬時点)

10/19

延長の期限(日本時間20日午前7時)

2.52億ドル

ウェンバンヤマの5年延長(約378億円)

1,510万ドル

ブランドン・ミラーの今季年俸(約22.7億円)

期限は10月19日、サインは23人中4人

NBAのドラフト1巡目で指名された選手は、まずルーキー契約を結ぶ。期間は基本4年で、3年目と4年目はチームが続けるかどうかを選ぶ(詳しくは用語集の「ルーキー契約」)。4年目に入る前の夏から開幕前までが、チームとの延長、いわゆるルーキー延長を結べる期間だ。

2023年ドラフト組にとって、その期限は現地10月19日の午後5時(アメリカ中部時間)。日本時間では20日の朝7時になる。Hoops Rumorsのまとめによると、延長の資格がある23人のうち、ここまでにサインしたのはヴィクター・ウェンバンヤマ(スパーズ)、アメン・トンプソン(ロケッツ)、オーサー・トンプソン(ピストンズ)、キーオンテ・ジョージ(ジャズ)の4人だけ。ジョーダン・ホーキンズはグリズリーズを解雇されたため、残りは18人になった。

延長しなかった選手は、来夏に制限付きFAになる。制限付きFAでは、他のチームが出した条件に元のチームが同じ条件で対抗でき、選手を引き留められる。つまり、今すぐ延長しなくても、チームが選手を失うリスクは小さい。ここが「期限直前まで決まらない」理由のひとつだ。

延長の“上限”と、トンプソン兄弟の5,300万ドル差

ルーキー延長には上限がある。経験年数が浅い選手の最高額は、サラリーキャップの25%から始まる5年契約で、報道ベースでは5年約2億5,100万〜2億5,200万ドルになる。ウェンバンヤマが7月に結んだのがまさにこの額で、5年約2億5,200万ドル(約378億円)、5年目は選手が選べるオプション付きだ。

実はウェンバンヤマは、昨季の活躍(史上最年少の最優秀守備選手)によって、上限が30%に上がる約3億300万ドルの契約も選べた。それでも25%を選んだのは、スパーズが周りの選手を補強する余地を残すためと報じられている。5,000万ドル以上を手放してでもチームの柔軟性を取ったことになる。

興味深いのはトンプソン兄弟だ。双子で同じ年に指名され、アメンは4位、オーサーは5位。延長はどちらも5年だが、アメンは約2億800万ドル、オーサーは約1億5,500万ドルで、差は約5,300万ドルある。昨季のアメンは平均18.3点・7.8リバウンド・5.3アシスト。オーサーは平均9.9点ながら、スティール王でオールディフェンシブ1stチームに選ばれた。延長の金額は過去の実績より「これからどこまで伸びるか」の見積もりで決まる。得点力で上積みが見込めるアメンに、より高い値段がついたわけだ。

2023年ドラフト組の延長(5年総額)

ESPN、NBC Sportsなどの報道による。ミラーはBleacher Reportのエリック・ピンカス記者の予想で、合意したものではない。キーオンテ・ジョージは出来高を除いた額
ウェンバンヤマ(1位・スパーズ)
$252.0M
アメン・トンプソン(4位・ロケッツ)
$208.0M
ミラー(2位・ホーネッツ)※予想
$191.0M
オーサー・トンプソン(5位・ピストンズ)
$155.0M
キーオンテ・ジョージ(16位・ジャズ)
$155.0M

ブランドン・ミラーはなぜまだ決まらないのか

残り18人の中でいちばんの大物が、2位指名のブランドン・ミラー(ホーネッツ)だ。昨季は65試合で平均20.2点、フィールドゴール成功率43.5%、3ポイント成功率38.3%、フリースロー成功率89.2%。今季の年俸は約1,510万ドル(約22.7億円)で、ルーキー契約の最終年になる。

交渉が長引いている理由として考えられるのが肩だ。ミラーは昨季序盤に左肩を亜脱臼し、5月に手術を受けた。ホーネッツのジェフ・ピーターソンGMはキャンプ前に「全面的に参加できる見込み」と話し、地元メディアには体重を約4.5kg増やしたとも伝えられている。チームとしては、プレシーズンで肩の状態を確かめてから金額を決めたい、という考えがあっても不思議ではない。

金額の目安としては、Bleacher Reportのエリック・ピンカス記者が5年約1億9,100万ドル(約287億円)と予想している。上限の約76%で、アメンとオーサーの間に入る計算だ。ピーターソンGMは「ブランドンにはとても長くここにいてほしい」と話しており、決裂より“いくらで決まるか”の段階とみられる。

10月19日までに延長する?しない?

サインしなかった選手は、2027年夏に制限付きFAになる
期限までに延長する
延長しないで来夏へ
選手のメリット
けがや不調があっても大金が保証される
活躍すれば、より高い契約を狙える
チームのメリット
来季以降の年俸が早く確定する
今季の働きを見てから金額を決められる
来夏の立場
新しい契約が2027-28から始まる
制限付きFA(他球団の条件にチームが対抗できる)
よくある落とし穴
チームは“伸びしろ代”を先払いする
交渉が長引き、キャンプ直前まで決まらない

クリッパーズのディック、ナゲッツのストローサー

日本のファンにとって身近な選手も、この18人に入っている。1人目はグレイディ・ディック。カワイ・レナードのトレードで、ブランドン・イングラムとともにラプターズからクリッパーズに移った。つまり八村塁と河村勇輝のチームメイトだ。2024-25は平均14.4点を記録したが、昨季は76試合で平均6.0点、3ポイント成功率30.1%と数字を落とした。

イングラムがアキレス腱のけがで開幕に間に合わない今、クリッパーズのウイングには出場時間が空いている(「イングラムの離脱で八村塁の役割はどう変わるか」)。ディックがその時間を取るのか、八村が取るのか。延長が決まらないまま開幕を迎えれば、ディックにとって今季は来夏の値段を決める“査定の1年”になる。河村の開幕ロスター争いも含め、クリッパーズの枠の事情は「河村勇輝はクリッパーズの開幕ロスターに入れるか?」で整理している。

2人目はナゲッツのジュリアン・ストローサー(2023年29位)。昨季は平均7.2点ながら、フィールドゴール成功率46.7%、3ポイント成功率38.7%といずれも自己最高だった。ヨキッチの周りで3ポイントを決められるウイングは、ナゲッツにとって貴重だ。ただ、ナゲッツの総年俸は余裕が大きくないので、延長するなら“役割に見合った額”に抑えたいはず。ナゲッツの年俸の状況はナゲッツの年俸一覧で確認できる。

期限を越えたらどうなるか

延長しなかった選手は、今季を終えて2027年の夏に制限付きFAになる。チームはクオリファイング・オファー(一定額の1年契約の提示)を出せば、他のチームの条件に対抗する権利を持てる。チームにとっては「今季の働きを見てから決められる」利点がある。

ただし、この方法には落とし穴もある。ピストンズのジェイレン・デュレンは、制限付きFAで交渉が長引き、キャンプ直前の期限の約90分前に5年2億ドルでサインした(「デュレンはなぜ期限90分前にサインしたのか?」)。近年はジョナサン・クミンガやジョシュ・ギディーも同じように長引いた。関係がこじれやすく、選手が1年契約を選んで翌年に出ていくリスクもある。

期限まで残り2週間。例年、最後の数日に駆け込みの合意が集中する。ミラーが上限の何%で決まるのか、ディックとストローサーは延長を勝ち取るのか、それとも“査定の1年”に入るのか。サラリーキャップの仕組みは「NBAサラリーキャップの仕組み」、FAの仕組みは「NBAのFAとは?」、選手の年俸は年俸ランキングで確認できる。NBA Naviでも10月19日の結果を追っていく。

これからの日程

Hoops Rumorsのまとめによる。時刻はアメリカ中部時間
  1. 1
    10月17日

    保証のない契約の選手を、年俸を払わずに解雇できる最終日

  2. 2
    10月19日 17時

    ルーキー延長の期限。同じ日に開幕ロスターも確定

  3. 3
    10月20日

    2026-27シーズン開幕

  4. 4
    2027年7月

    延長しなかった選手が制限付きFAに

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