NBAとGリーグを行き来する契約
ツーウェイ契約(Two-way contract)は、NBAのチームと、その傘下にあるGリーグ(NBAの下部リーグ)のチームの両方でプレーできる特別な契約だ。名前のとおり、2つのリーグを“行き来する”ための契約で、2017-18シーズンに始まった。
通常のNBA契約(本契約)を結んだ選手は、原則としてNBAのロースターに入って1年を戦う。一方ツーウェイ契約の選手は、ふだんはGリーグで試合経験を積みながら、NBAチームにけが人が出たときや戦力が必要なときに呼ばれてNBAの試合に出る。
ツーウェイ契約の主なルール
2023年に結ばれた労使協定(CBA)では、1チームがツーウェイ契約を結べるのは3人までとされている。通常のロースター15人とは別枠なので、チームは最大18人の選手を抱えられる。
ツーウェイ契約の選手がNBAの試合に出場できるのは、レギュラーシーズン50試合までだ。プレーオフには出場できず、プレーオフで起用するには本契約へ切り替える必要がある。
年俸は本契約よりかなり低く、新人の最低年俸の半分程度に設定されている。その代わり、ツーウェイ契約の年俸はサラリーキャップの計算に含まれない。チームにとっては、キャップを圧迫せずに若手や伸びしろのある選手を手元に置いておける仕組みだ。対象になるのは、NBAでの経験年数が少ない選手に限られる。
キャンプ契約(エグジビット10)との違い
ツーウェイ契約とセットでよく出てくるのが「エグジビット10」だ。これはシーズン前のトレーニングキャンプに参加するための契約で、キャンプやプレシーズンの評価次第で、開幕前にツーウェイ契約へ切り替えることができる。
つまり、まずエグジビット10でキャンプに参加し、評価されればツーウェイ契約、さらに活躍すれば本契約へ、という“階段”がある。河村勇輝もこの階段を上ってきた選手の一人だ。
NBAへの“階段”
- 1エグジビット10
トレーニングキャンプに参加するための契約。評価次第で開幕前にツーウェイ契約へ切り替えられる。
- 2ツーウェイ契約
NBAとGリーグを行き来する。NBAの試合は50試合まで、プレーオフは出場不可。
- 3本契約
15人のロスター入り。出場試合の制限がなく、プレーオフにも出場できる。
河村勇輝と渡邊雄太の場合
河村勇輝は2024年、グリズリーズとエグジビット10の契約を結んでキャンプに参加し、開幕前にツーウェイ契約を勝ち取った。172cmという体格ながら、プレシーズンで見せたゲームメイクが評価された結果だった。その後はブルズとツーウェイ契約を結び、2026年8月にはクリッパーズとキャンプ契約を結んで、再びNBAの舞台を目指している。
渡邊雄太は、2018年にグリズリーズとツーウェイ契約を結んで日本人2人目のNBA選手になった。Gリーグと行き来しながらアピールを続け、2021年にラプターズで本契約を勝ち取った。ツーウェイ契約から本契約への道筋を、日本人選手として最初に示した存在だ。
ツーウェイから主力になった選手たち
ツーウェイ契約は、下積みの契約というだけではない。ここからリーグの主力へ育った選手も少なくない。代表的なのがアレックス・カルーソだ。レイカーズでツーウェイ契約からキャリアを始め、守備の名手として2020年のレイカーズの優勝、2025年のサンダーの優勝に貢献した。
ダンカン・ロビンソンも、ヒートでツーウェイ契約から出発し、リーグ屈指のシューターとして大型契約を結ぶまでになった。ドラフトで指名されなかった選手や、下位指名の選手にとって、ツーウェイ契約はNBAの扉を開くための大切な入り口になっている。
日本人選手のニュースで「ツーウェイ契約」という言葉を見かけたら、それはゴールではなく、本契約へ向けた挑戦のスタートラインだと考えると分かりやすい。