チーム名には街の物語が詰まっている
NBAのチーム名は、ただのかっこいい言葉ではない。多くは本拠地の街の歴史や産業、自然にちなんで付けられていて、名前を知るとその街の姿が見えてくる。
一方で、NBAではチームの移転が珍しくない。引っ越し先でも元の名前を使い続けた結果、街と名前がちぐはぐになったチームもある。由来をタイプ別に見ていくと、リーグの歴史そのものが浮かび上がってくる。記事の最後には、30チームの由来を一覧表にまとめた。
街の歴史から生まれた名前
ボストン・セルティックスの「セルティック」は、ケルト人のこと。ボストンにはアイルランド系の住民が多く、その人たちに親しまれるようにと名付けられた。チームカラーの緑も、アイルランドを象徴する色だ。
ニューヨーク・ニックスは「ニッカーボッカーズ」の略。ニューヨークに最初に入植したオランダ系移民がはいていた、ひざ下で絞るズボンのことで、転じてニューヨークっ子を指す言葉になった。フィラデルフィア・76ersは、1776年にアメリカ独立宣言がフィラデルフィアで署名されたことに由来する。
シャーロット・ホーネッツ(スズメバチ)も歴史由来だ。アメリカ独立戦争のとき、イギリス軍の将軍がシャーロットの激しい抵抗を「スズメバチの巣のようだ」と表現したという逸話から来ている。ポートランド・トレイルブレイザーズは、オレゴン・トレイルを進んで西部を切り開いた開拓者たちを表している。
ナゲッツは“ゴールドラッシュ”の名残
デンバー・ナゲッツの「ナゲット」は、金の塊(金塊)のことだ。19世紀半ば、コロラドでは金や銀が見つかり、一攫千金を夢見る人々が押し寄せた。デンバーはこのゴールドラッシュの中で生まれた街で、チーム名はその歴史を今に伝えている。
実は、今のナゲッツは最初から「ナゲッツ」だったわけではない。1967年にABA(NBAのライバルリーグ)で誕生したときは「デンバー・ロケッツ」という名前だった。NBAへの合流を見据えた1974年、すでにNBAにヒューストン・ロケッツがあったため、ナゲッツへと改名した。デンバーには1949-50シーズンにNBAでプレーした別の「ナゲッツ」もあり、名前はその復活でもあった。
街の産業から生まれた名前
デトロイト・ピストンズは、エンジン部品のピストンから。ただし、チームが生まれたのは自動車の街デトロイトではない。インディアナ州フォートウェインで、ピストンを製造する会社の経営者がチームを作ったのが始まりで、1957年にデトロイトへ移ったことで、偶然にも街にぴったりの名前になった。
シカゴ・ブルズ(雄牛)は、かつてシカゴを支えた食肉産業に由来する。インディアナ・ペイサーズは、インディ500で先導役を務める「ペースカー」と、州で盛んだった繋駕速歩競走の馬(ペーサー)を掛け合わせた名前だ。
ヒューストン・ロケッツは、もともとサンディエゴで誕生したチーム。宇宙開発産業が盛んだったサンディエゴで付けられた名前だったが、1971年にNASAの宇宙センターがあるヒューストンへ移り、結果的にこちらも“ぴったりの街”にたどり着いた。
引っ越しで“ずれた”名前
もっとも有名なのが、ロサンゼルス・レイカーズだ。「レイカー」は湖の人という意味で、「1万の湖の地」と呼ばれるミネソタ州のミネアポリスにいた頃の名前だ。1960年にロサンゼルスへ移転した後も名前を変えなかったため、湖の少ない乾いた街に“湖の人”がいることになった。
ユタ・ジャズも同じパターンだ。ジャズ音楽の発祥地ニューオーリンズで1974年に誕生し、1979年にユタ州ソルトレイクシティへ移転した。ジャズのイメージとはあまり結びつかない土地だが、名前はそのまま残っている。メンフィス・グリズリーズも、カナダのバンクーバーで生まれた名前で、ハイイログマはテネシー州には生息していない。
名前を変えたチーム
ワシントン・ウィザーズは、1997年まで「ブレッツ(弾丸)」という名前だった。銃による暴力を連想させることを当時のオーナーが問題視し、公募を経て「ウィザーズ(魔法使い)」に改名した。
サクラメント・キングスは、前身の「ロイヤルズ」がカンザスシティへ移った際、同じ街にMLBのロイヤルズがあったため「キングス」に変わった。いちばん複雑なのがホーネッツで、2002年にシャーロットからニューオーリンズへ移り、2013年に州鳥にちなんで「ペリカンズ」に改名。空いた「ホーネッツ」の名前を、シャーロットのボブキャッツが2014年に取り戻し、過去の記録も引き継いだ。
ファンの公募で決まった名前
比較的新しいチームの多くは、ファンからの公募で名前を決めている。トロント・ラプターズ(1995年)は、公開されたばかりの映画『ジュラシック・パーク』の人気を受けて、恐竜の名前が選ばれた。
フェニックス・サンズ(砂漠の太陽)、ミネソタ・ティンバーウルブズ(森のオオカミ)、ミルウォーキー・バックス(雄ジカ)、サンアントニオ・スパーズ(カウボーイの拍車)も公募から生まれた名前だ。マイアミ・ヒートは暑い気候、オーランド・マジックはディズニー・ワールドのある“魔法の街”と、土地のイメージがそのまま名前になっている。
30チームの名前の由来一覧
最後に、30チームの名前の意味と由来を東西のカンファレンス別にまとめた。好きなチームの名前の由来を知ると、試合を見るときの愛着も少し変わってくるはずだ。