NBAでも「ダンクをしない選手」は意外と多い
NBAと聞くと、リング上で繰り広げられる豪快なダンクを思い浮かべる人は多い。だが実際には、試合でほとんどダンクをしない、あるいは身体的にダンクができない選手も少なくない。そして、その中にはリーグを代表するスターも含まれている。
彼らに共通するのは、ダンクという“最も分かりやすい武器”を持たない代わりに、別の能力をとことん磨き上げた点だ。パス、シュート、駆け引き——跳べないからこそ伸ばした技術が、結果的に彼らをトップ選手に押し上げた。
象徴はスティーブ・ナッシュ — 跳ばずに2度のMVP
ダンクをしない名選手の代表格が、スティーブ・ナッシュだ。彼は2005年と2006年に2年連続でシーズンMVPを獲得した歴史的ポイントガードだが、いわゆる“跳べる選手”ではなく、試合でダンクを見せることはほとんどなかった。
それでもナッシュは、視野の広いパスと精度の高いシュート、そしてピック&ロールの達人としてサンズの華麗なオフェンスを操った。空中での迫力ではなく、地上での頭脳とスキルでリーグの頂点に立った——彼の存在こそ「ダンクできなくてもMVPになれる」ことの何よりの証明だ。
身体的に届かない — 小柄な名選手たち
そもそもダンクが物理的に難しい選手もいる。身長160cmと、NBA史上最も背の低い選手として知られるマグジー・ボーグスは、その典型だ。彼は14年間NBAでプレーし、優れたボールハンドリングとスピード、そして長身選手相手でも臆さない守備でキャリアを築いたが、試合でダンクを決めることはなかった。
165cmのアール・ボイキンスら、リーグには小柄ながら長く生き残った選手が何人もいる。彼らは“跳べない”というハンデを、スピードと判断力、そして勝負度胸で覆してみせた。ダンクの有無は、選手としての価値とは別物だということがよく分かる。
シューターは跳ばずに点を取る
ダンクが得意でなくても、シュート力さえあればNBAで長く戦える。代表的なのがJJ・レディックのようなスペシャリストだ。彼は爆発的なジャンプ力を持つタイプではなかったが、卓越した3ポイントシュートとオフボールの動きで、15年近くリーグの第一線に立ち続けた。
リング上の高さではなく、リングを“通す”精度で勝負する。3ポイントが攻撃の中心になった現代では、こうした跳べないシューターの価値はむしろ高まっている。ダンクで沸かせる選手とは違う形で、彼らは試合を決めてきた。
ダンクは“数ある武器の一つ”にすぎない
ダンクは確かに観客を沸かせる華やかなプレーだが、点数としては2点。フローターやミドル、そして3ポイントでも同じか、それ以上の得点を生み出せる。跳べない選手たちは、その事実を誰よりも理解し、別のルートで得点を積み上げてきた。
むしろ3ポイント全盛の現代NBAでは、“跳べないスター”はより成立しやすくなっている。ダンクができるに越したことはないが、できないからといって一流になれないわけではない。ナッシュやボーグスが示したように、NBAの強さは跳躍力だけでは決まらないのだ。