フィル・ジャクソン

ジョーダン、ピッペン、シャック、コービー。扱いが難しい超スターをまとめ、11度の優勝へ導いた“禅マスター”の本質を読む。

フィル・ジャクソン

スターを支配せず、勝つ方向へ流したHC

フィルのすごさは、戦術ボードだけでは語れない。ジョーダンにボールを持たせ続ければ勝てる試合は多かったが、それだけではプレーオフで限界が来る。フィルはジョーダンの支配力を消さず、ピッペン、グラント、ロッドマン、ロールプレイヤーまで勝負に参加させる形へチームを変えた。

レイカーズでも同じだった。シャックとコービーという巨大な才能は、同時に巨大な緊張関係でもあった。フィルはその衝突を完全に消したわけではないが、少なくとも優勝に必要な期間だけは、2人のエネルギーを同じ方向へ向けた。

トライアングルは“型”ではなくスターの我慢を引き出す装置

トライアングル・オフェンスは複雑なセットとして語られがちだが、フィルのチームで重要だったのは、スターがボールを止めすぎない文化を作ったことだ。ジョーダンもコービーも最後は自分で決められる選手だったが、そこへ行くまでに周囲を生かすから守備は的を絞れなくなった。

つまりフィルは、スターに『我慢しろ』と説教したのではなく、我慢した先にもっと大きな支配力があることをチームで証明したHCだった。

王朝の裏側にあったメンタル管理

11回の優勝は、単に強い選手を預かっただけでは届かない数字だ。連覇を狙うチームは、相手よりも自分たちの慢心、疲労、ロッカールームの小さな不満と戦うことになる。フィルはそこに瞑想、読書、個別の距離感を持ち込み、長いシーズンを精神面から設計した。

批判的に見れば、ニックス時代のフロント業務は成功とは言いにくい。それでもHCとしてのフィルは、NBA史上最高クラスのスター管理者であり、王朝を“続ける”ことの難しさを最もよく知る人物だった。

この記事はNBA.Navi編集部が作成・更新しています。