この記事のポイント
- 1969年にNBAロゴが採用
- デザイナーのアラン・シーゲルがウェストのドリブル写真を選択
- シルエットが縦長でロゴにしやすい
- ドリブルの動きが分かりやすくシンプルでもバスケットボールらしさが伝わる
数字で見るNBAロゴ
NBAロゴの採用
同時代のラッセルの優勝
選手としてのウェストの優勝
「最強だったから選ばれた」ではない
NBAがロゴを作ったとき、ジェリー・ウェストが選ばれたのは「リーグを代表する最高の選手だから」という理由ではなかった。1969年、NBAはABAというライバルリーグと競争しており、新しいロゴが必要になった。
デザイナーのアラン・シーゲルは雑誌の写真を大量に見て、その中からジェリー・ウェストがドリブルしている写真を選んだ。理由はデザイン上の都合だった。シルエットが縦長でロゴにしやすく、ドリブルの動きが分かりやすく、シンプルにしてもバスケットボールらしさが伝わるからだ。シーゲル自身も後に、その写真はロゴにするのに完璧だったと振り返っている。
実績だけならラッセルやチェンバレンが上
その時代にはウィルト・チェンバレンやビル・ラッセルもいた。純粋な実績で考えると、ラッセルは11回優勝、チェンバレンは得点記録の塊、ウェストは優勝1回だ。「実績だけならラッセルやチェンバレンの方が上」と考える人も多い。
ただし、チェンバレンの有名写真は大きな体でゴール下にいるものが多く、ロゴ向きのスマートなシルエットが少なかったとも言われている。逆にウェストの写真は細身でドリブル姿が非常に美しかったため採用された。
NBAの公式見解と現実
NBAは今でも公式には「ロゴは特定の選手ではなく、バスケットボール選手を表したもの」という立場を取っているが、実質的にウェストがモデルなのは公然の秘密だ。
個人的には、「実績」で選ぶならラッセル、「知名度」で選ぶならマイケル・ジョーダン、「デザインとして選ばれた」のがウェスト、という感じだ。ロゴの選定はあくまでデザインの都合だったというのが正しい理解だ。
“ロゴの男”を選ぶなら
「ロゴを変えるべき」という声
ロゴのモデルがウェストだということは公然の秘密になったが、ウェスト本人は、そのことを誇るよりも居心地の悪さを口にすることがあった。自分一人がリーグを代表するような扱いを受けることに、戸惑いがあったとされる。
2020年にコービー・ブライアントが亡くなった際には、ロゴをコービーのシルエットに変えるよう求めるオンライン署名に、数百万人が賛同した。それでもNBAはロゴを変えていない。2024年にウェストが86歳で亡くなったあとも、あのシルエットはリーグの顔であり続けている。
“ミスター・クラッチ”と呼ばれた名選手は、GMとしてもレイカーズの黄金期を築いた。その意味では、デザインの都合で選ばれたロゴのモデルが、結果的にNBAの歴史を深く体現する人物だったとも言える。
お手本はMLBのロゴだった
NBAのロゴには、はっきりしたお手本がある。前年の1968年に作られたMLB(メジャーリーグ)のロゴだ。赤・白・青の3色を使い、その中に選手のシルエットを白抜きで置くデザインで、当時のNBAコミッショナーだったウォルター・ケネディは、これと同じような統一感のあるロゴを求めたとされる。
見比べると、縦長か横長かの違いはあるものの、3色の配色と白いシルエットという組み立てはそっくりだ。プロスポーツの「リーグのロゴ」という考え方そのものが、まだ新しかった時代の話である。
NBAが「ウェストではない」と言い続ける理由
NBAが公式にモデルを認めない理由は、はっきり説明されていない。ただ、特定の選手をリーグの象徴だと認めてしまうと、その選手の肖像をどう扱うか、ほかの名選手とのバランスをどう取るかといった問題が出てくる。「誰でもない選手」にしておくほうが、リーグにとって扱いやすいのは確かだ。
ウェスト本人も、自分がロゴだと強く主張したことはない。むしろ、ロゴの話をされることを照れくさそうにしていた。だからこそ、このロゴは半世紀以上たった今も「誰でもあって、誰でもない」シルエットとして使われ続けている。

